「伝えたい」という気持ちがあれば、7割くらいは伝わります

NAGOMI VISITホストの方へのインタビューをご紹介します。東京にお住まいで、これまでに30回以上のホームビジット受け入れをされている樋口さんにお話を伺いました。

事務局)これまでの交流で、特に記憶に残っているエピソードはありますか?また、「これはちょっと失敗しちゃったな」「困ったな」というお話もあればぜひ教えてください。

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私たち夫婦はあまり英語が得意ではなく、受け入れの申し込みをする際にいつもその旨をお伝えしています。しかし当日、ゲストと会話があまり盛り上がらなかった際には、「英語が話せないから、楽しんでもらえなかったのかも。。。」と落ち込んだりもするのですが、後で「すごく楽しかった、ありがとう!」とメールが届いたりします。

日本人でも、あまり感情を表に出さなかったり、シャイな人もいるので、最近はそのあたりはあまり気にせず、いつも通りにおもてなしの気持ちをもって接するようにしています。

それから以前ヨーロッパからのゲストで、「いつも日本人が食べている食事がいい」という希望があった際に一汁三菜のスタイルで出したところ、ゲストが1品ずつおかずから食べはじめました。

途中で「お醤油が欲しい」と言われ、おかずの味が薄かったかな?と不安になったのですが、ゲストは白いご飯にお醤油をかけてご飯だけを集中的に食べ始めました。彼らにとっては白いご飯は料理の1品という認識だったとわかり、ちゃんと食べ方を説明すべきだったと反省しました。と同時に、おかずの味の濃さをご飯で緩和しながら食べる、そして汁物で流し込むという、いわゆる三角食べは、日本の食文化だと実感しました。

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一汁三菜スタイル

事務局)樋口さんがコンスタントにホームビジットでゲストを受け入れをされている一番のモチベーションは何ですか?

日本にいながら世界のいろいろな国の人たちと出会えることです。

そして日本のことを好きになって、また日本に来てくれる方々がいます。

帰国後に「日本はすごく楽しかったから、家族や友達に行った方がいいとすすめたよ」とか「また今年日本に行こうと思っているよ」とメールを頂くと、私たちのおもてなしが日本のファンなってもらうお手伝いができたかも、と嬉しく思います。

事務局)受け入れ申し込みをする際に、どんな基準でゲストを選んでいますか?また、受け入れ申し込みの際にはどんなメッセージを送るようにしていますか?

年齢的に近い世代や、共通の趣味、職業、また私たちが行ってみたいと思っている国、行ったことがある国のゲストに受け入れ申し込みをすることが多いです。その際には「私の夫はあなたと同じ職業です」とか「私たちはあなたの国に行ったことがあります」など、ゲストにもお伝えするようにしています。私たちは英語がペラペラではないので、少しでも共通点があった方が話が盛り上がりやすいと思うからです。

また、誰からも受け入れ申し込みが入っていないゲストに申し込みをすることも、結構あります。せっかく遠い国から何時間もかけて日本にやってきて、NagomiVisitに興味を持ってくれたのに、体験できずに帰国されてしまうのは残念だと思うのです。

どのホストからも受け入れが入っていないゲストで、例えば希望条件に「子供のいる家庭」とあっても、「子供はいないけれど、それでもよかったらぜひ我が家に来てください」とメッセージを送り、受け入れが実現したこともあります。

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樋口さんの積極的なオファーでホームビジットが実現したことも。

事務局)受け入れが確定してから当日までに、ゲストとはどんなやり取りをしていますか?

いつも最初に料理の希望を伺います。

NagomiVisitのゲストの皆さんは食に興味のある方々が多く、日本でいろいろな料理に挑戦したり、複数のホスト宅でNagomiVisitを申し込んでいることもあるため、料理がかぶらないようにするためです。

「何か食べてみたい日本食ありますか?なかったら、下記から選ぶこともできますよ」と手巻き寿司やすき焼き、一汁三菜などを、簡単な英語の説明文をつけてお送りしています。

ゲストから質問があった際には都度お答えしていますが、基本的に必要最低限のやりとりしかしません。事前に聞きすぎると、当日話すことがなくなってしまうので(笑)

事務局)ゲストから、「一緒にお料理を作りたい」というリクエストを受けたことはありますか?どんなお料理を作りましたか?また、ゲストと一緒にお料理する際に役立つコツがあればぜひ教えてください。

繰り返しになりますが、私たちは英語があまり得意でなく、また夫婦二人で受け入れをしており、料理を一から一緒に作るというのはなかなかハードルが高いため、今まで挑戦したことはありません。今は、出し巻き玉子を出す時に卵焼きを巻いてもらうことくらいですが、今後はもっといろいろ一緒に料理ができたらいいなと思います。

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ゲストと一緒に出し巻き卵作り

学生さんなど若い世代のゲストの際にはたこ焼きプレートを使ったベビーカステラ作りなど、あまり説明しなくてもできる簡単な料理を選んで、雰囲気だけでも体験してもらうようにしています。

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ベビーカステラ作り

事務局)ゲストに特に好評だったお料理は何ですか?逆に、「このメニューはやめておいたほうがいいな」と感じたご経験はありますか?

最近評判が良く、よく作っているのは「豆腐グラタン」です。

豆腐という日本独特の食材と、多くのゲストが食べなれているチーズの組み合わせが良く、毎回おかわりの希望があります。

自分たちが海外を旅して、その土地の代表料理を食べた時に好みに合わないことがあり、やはり食べなれた味を美味しく感じるんだなぁと思った経験がありました。

でもせっかく外国に来たんだから、その土地の食べ物を食べたいという思いもあります。

そこで、いつもおかずとしてよく作っていた豆腐グラタンを出してみたところ、皆さんに喜んで頂けました。

不評だったのは「ぬか漬け」です。

自宅で漬けたきゅうりのぬか漬けはやはりニオイが気になったようで、さらに食べる前にぬか床を見せてしまったのも失敗だったと思います。

事務局)ホームビジット中に英語がうまく伝わらず、困ってしまったご経験はありますか?そんな時はどうされていますか?

英語がうまく伝わらないことは結構ありますが(笑)、困ってしまうということはあまりありません。

ボディランゲージやスマホの翻訳機能なども使いますが、「伝えたい」という気持ちがあれば、7割くらいは伝わっている気がします。

またうまく伝えられなかったなと思ったことは、後で調べて、次回は伝えられるように準備しておいたりします。

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ご友人も誘って一緒にゲストをお迎えすることもあるそうです

事務局)最後の質問です。NAGOMI VISITは、ホームビジットの活動を通して1人1人が多様性を経験し、言葉や国を超えて相手と認め合い尊敬し合う関係性を築いていくことのできる社会を目指しています。あなたご自身は、NAGOMI VISITでホストを始める前と今を比較して、このゴールに近づいていると感じますか?

近づいていると思います。

自分が尊敬できない人や認められない人と、家で楽しく食事を共にすることはできないと思うので、NagomiVisitの活動こそが、まさに「言葉や国を超えて相手と認め合い尊敬し合うこと」だと感じています。

NagomiVisitに友人に加わってもらったり、NagomiVisitの話をして、興味を持ってもらえることがあります。

また我が家に来たゲストが自分の周りの人たちにNagomiVisitをすすめてくれたりします。

NagomiVisitに共感してくれる方々が増えることによって「言葉や国を超えて相手と認め合い尊敬し合う関係性を築いていくことのできる社会」が少しずつ広がっていってくれているのではないかと思います。