「ホームステイ」は聞いたことがあるけど、「ホームビジットって何・・・?」というご質問をいただくことがよくあります。ここでは和キッチンのホームビジットについてご紹介しますね。
※レジャー・サービス産業労働情報開発センターが発行する季刊誌『SQUARE』(旅行・観光・ホテル業従事者の方向けの業界誌)2012年4月号に寄稿させていただいた内容を抜粋しています。
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昨年10月のある日曜日、目黒駅でアメリカ出身のKaydee(22)、カナダ出身のJessica(21) の2人と待ち合わせをしたのは都内在住の室さん。韓国に留学中で5日間だけ日本に遊びに来た2人を室さんがホストファミリーとして迎えました。
歩いて室さんの自宅に到着すると、お父さん、お母さんも「いらっしゃい」と迎えてくれます。ゲストの2人は日本の家庭に始めて足を踏み入れ、最初こそ少し緊張気味でしたが 目の前に用意された夜ごはんに興味津々! この日、室家では手巻き寿司を用意されていて、さっそく食卓を囲んで全員で「いただきます!」夜ごはん開始です。
これだけを見ると、まるで宿泊を伴うホームステイの始まりのようですが実はホームステイではありません。海外からの旅行者が一般の日本人の家庭におじゃまして、夜ごはんやランチだけを体験することができるアクティビティです。ホームステイをごはんの時間だけに濃縮したバージョン、とイメージしていただけるとわかりやすいかもしれません。私たちはこれを、「ホームビジット」と呼んでいます。今回は、このホームビジットについてご紹介させてください。
その国のリアルを見てみたいけど・・・
海外旅行に行ったときに、その国に住む人たちのリアルな生活を見てみたい、彼らと交流してみたいと思ったことはありませんか?
私は海外旅行をするたびにそう思ってしまうのですが、往々にして観光客が地元の人と交流をしたり、地元の人が普段家で食べているものを実際に食べてみたり、というチャンスはなかなかないのが実情です。 日本にやってくる観光客も同様に、サービスパーソン以外の日本人、普通に日本に暮らしている日本人と交流できるチャンスは残念ながらほとんどありません。
外国人が日本に来ても、リアルな日本人の食に触れられる機会がほとんどない
また訪日外国人が日本に来たときに、私たち一般の人が普段何を食べてるのかを知るタイミングも、実はほとんどありません。
日本の食はそのヘルシーさやバラエティの多さで 世界でも常に注目の的ですので、旅行者の期待値も大変高く、食に関してはかなりの興味を持って日本にやってきます。しかし彼らが日本に来て食べられる日本食は、あくまでもレストランで提供されている食事です。ミシュランで3つ星を獲得したレストランに赴く人もいれば、今流行りの居酒屋体験をする人もいます。中には牛丼チェーンなど日本の ファーストフードに挑戦している人もいます。もちろん、レストランで提供されている食も日本が世界に誇る食文化です。
一方で、私たちが日常的に家庭で食べている食事。 例えば肉じゃがやカレーライス、餃子、そうめん。こういう食事は、訪日旅行者が日本に来ても体験することはなかなかできません。 そして日本の「リアルな食」は、やっぱり私たちが普段食べている家庭のごはんだと思うのです。
そこで、訪日旅行者が気軽に日本のリアルな生活を体感でき、一般の家庭の食事を楽しめ るアクティビティを提供することにしました。それが冒頭でご紹介した「ホームビジット」です。
ホームビジットの様子~室家の場合~
手巻き寿司晩ご飯を体験した冒頭のKaydeeとJessicaに、室さんが「もしよかったら ちょっと試してみる?」と出してくれたのはいかの塩辛。
2人とも恐る恐る、といった様子で一口食べてみましたが、Kaydeeは「かなり辛いけど、う~ん、悪くないかも!」という感想。Jessicaは完全にアウトのようで、食べ終わった直後に水をがぶ飲みしていました(笑) このように日本の食卓にあるちょっとした食を試してみることができるのも、旅行者が家 庭でごはんをごちそうになる醍醐味かなと思っています。
プログラム終了後に2人からはこんな感想をいただきました。
“It was absolutely wonderful! My host family was so welcoming and told me so much about Japanese culture.And the food was fantastic. It is one of the best things I’ve done in Japan.”(この経験は本当に最高でした!私のホストファミリーはとっても歓迎してくれて、日本文化についてたくさんのことを教えてくれました。そしてごはんも素晴らしかったです。日本でしたことのなかで、やって良かったことのうちのひとつです。) 彼女達が室さんのお宅に滞在したのはたった3時間ほどですが、とても素敵な思い出になったようです。
ホームビジットの様子~川俣家の場合~
川俣家にホームビジットで訪れたのは、ニューヨーク在住でパリとバンコクへの出張帰りに、2日間だけ東京に立ち寄っていたHarlen(35)。 Harlenは生姜が大好き!とのことで、生姜が入ったちらし寿司がとってもお気に入りのようでした。
音楽好きな川俣夫妻。Harlenもかなり音楽が好きなようで、お互いの好きなアーティストの話題で盛り上がり、会話が絶えませんでした。 Harlenのパリ、バンコク、そして東京と滞在した今回の旅(出張)のなかで、一番美味しかった食事は?という話題では、間髪入れずに「このランチが一番サイコー!」とも。 これは受け入れ側としてもとっても嬉しいですよね。 基本的に会話は全て英語ですが、受け入れ側が英語堪能でないといけないということはありません。例えばホスト側が流暢な英語をしゃべれなくてもおもてなしの気持ちはゲストに十分伝わるし、ゲストのありがとう!美味しい!という気持ちもホストに伝わります。
もちろん英語がペラペラしゃべれるのにこしたことはないのですが、そこが重要ポイントではなく、大切なのは「お互いの交流したい気持ち」だと毎回実感しています。
たった2~3時間程度のコミュニケーションですが、ゲストにとっても受け入れるホストにとっても、ちょっと楽しくて心に残る思い出になっていたらいいなと思っています。
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※レジャー・サービス産業労働情報開発センターが発行する季刊誌『SQUARE』(旅行・観光・ホテル業従事者の方向けの業界誌)2012年4月号に寄稿させていただいた内容を抜粋しています。